← 本棚へ戻る
白鳥の歌なんか聞えない 表紙
小説

白鳥の歌なんか聞えない

No.343 | 庄司薫 | 新潮文庫 | (2026/10/08 読了/生野図書館で借りて読了) ★★★★★

主人公の薫くんは、大学受験を1年先に伸ばすことになった浪人生。彼が頭の中で考えていることを自分で語りながら物語が進んでいきます。

本作では、知識の塊のような小沢のおじいさんが病に伏し死んでいく姿を前に、虚しさや腹立たしさを感じる登場人物たちの感情が丁寧に描かれています。その「死んでいく素晴らしい知性」や美しいものに魅入られて動揺してしまう幼馴染の由美に対し、薫くんは死の虚しい罠から引き戻そうと葛藤し、向き合おうとします。

引用 QUOTATION

【知識について】

「せっせと知識を身につけることの効用として、その閾値を上げるという意味を考えているんだよ。……知識を身につけるってことの目的には、その知識を使うということのほかに、それを使わないですますっていうか、そういう知識にあわてたりしないためっていうことがあるだろう?」― p.217

【デリカシーの浸透圧について】

「およそ人が二人以上集まれば、デリカシーはかならず浸透圧で多い方から少ない方に流れ出て、そしてよりデリケートな方がかならず損して傷つくんだ。これは、誰がなんといっても、この世の中の人間関係における基本的事実としてそうなんだ。」― p.207

【何のために頑張るのかについて】

「なんだかんだと言っても、結局のところおれたちは、いまおまえの言った、世のため人のために頑張ろうみたいな気持を、捨てるわけにはいかないわけだろう? どんなに気取ったり皮肉ったり偽悪趣味でやっても、どうしたってこの気持は捨てられない。」― p.210

学生時代に何度もくり返し読んだ庄司薫の「赤・黒・白・青」シリーズ。もう書店では手に入らないため図書館で借りて、何十年ぶりかに再読しました。ストーリーはほとんど覚えているものの、一つひとつのフレーズがとても懐かしく胸に響きます。薫くんのとても面倒くさくて優しい性格や、若者の誰もが持つ自信のなさ、ずるさ、面倒くささを丁寧に語ってくれるからこそ、学生時代に夢中になって読んだのだと改めて実感しました。

Amazonのアソシエイトとして、とくじぃ(tokupapa.com)は適格販売により収入を得ています。
当ページは楽天アフィリエイトを利用しています。リンクから商品を購入されると、売上の一部がとくじぃに還元されることがあります。