小説
正欲
人にはなかなか理解してもらえないたぐいの欲(特殊な性的嗜好)を抱えて生きる登場人物たち。マジョリティ社会の中でその秘密を誰にも打ち明けられず、居場所のなさや息苦しさを抱えて生きていく姿が繊細かつ圧倒的な迫力で描かれます。
物語は中盤から後半にかけて登場人物たちの人生が交錯していき、最終的には冒頭に提示されていた「ある一つの事件(報道)」へと繋がっていきます。
引用 QUOTATION
【マジョリティについて】
「マジョリティというのは何かしら信念がある集団ではないのだと感じる。マジョリティ側に生まれ落ちたゆえ自分自身と向き合う機会は少なく、ただ自分がマジョリティであるということが唯一のアイデンティティとなる。そう考えると特に信念のない人ほど、自分が正しいと思う形に他人を戻そうとする“行為”に行き着くというのは、むしろ自然の摂理なのかも……知れない。」― p.294
【社会の規制・排他性について】
「世界はきっとこれからますます、自分はまとも側の岸にいると信じている人が不適切だと定めたものを排除していく方向に進んでいく。『子どもに悪影響を及ぼす可能性』、『不快な気持ちを与える可能性』、『社会にとって良くない思想を助長する可能性』という、どう足掻いても完全に消し去ることのできない“可能性”を盾に、規制の範囲は広がっていく。」― p.409
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