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よくがんばりました。 表紙
自己啓発

よくがんばりました。

No.248 | 喜多川泰 | サンマーク出版 | 1650円 (2022/10/03 読了/楽天ブックスで購入) ★★★★★

かつて家族を捨てた父・哲治の訃報を受け、故郷の西条へ向かった教師の嘉人。連絡先も知らず互いに他人として生きてきた嘉人だったが、父ゆかりの人々との出会いを通じて、父が密かに抱き続けていた不器用な愛と、「祭り」や「伊勢物語」に込められた想いを知っていく。

装丁家:坂井英子(本文DTP)/初版:2022.9.15 初版印刷・9.30 初版発行

引用 QUOTATION

電車のなかの読書は人にとって「心の温泉タイム」だった。このひとときがなければ自分はとっくの昔に壊れてしまっていただろう。この時間に「石橋嘉人」は「石橋先生」になるのだ。― p.29
「最初に読んだ本にね、器の話が書いてあったんですよ。グラスに水が入っている。そこに石が投げ込まれる。そうすると、器が壊れて、水が溢れてしまう。洗面器に同じ石が投げ込まれると水が溢れる。お風呂の浴槽なら波が立つ。大きな池なら波紋が広がり、海なら何の影響も感じられないかもしれない。やってきた状況は『望んでいない石が急に投げ込まれる』というものなんですがね、まったく同じことが起こっても、器の大きさで、それがすべてを壊してしまうほどの大ごとになるか、何の影響もないかが決まる、要はこちらの側の心の問題なんだっていう話でした」。― p.228
授業というのはライブだ。先生一人でつくるものではなく、そこにいるたくさんの生徒と一緒につくっていくアドリブが詰まったライブである。返ってくる反応によってどのように流れていくかが変わる。だから、事前に教える側でシナリオを固めすぎたり、多くの情報を詰めこみすぎたりするとうまくいかない。嘉人は、山吹が必死で準備をしすぎている姿を見て、逆に少し不安になった。― p.30
そういう生徒に接するときこそ、どうしたらいいかをとことん考え、試行錯誤を繰り返しながら、自らの接し方を成長させていき、全員ではないにしても、最終的にはそういった生徒が、別人のように優しくなったり、周りのことを考えるようになったりする様子を何度も見てきた。その経験から、相手がどのような態度で、どんな行動を取ろうとも、それだけで相手のことを決めつけず、必ず違った一面があるという信念を持って接するようになっていった。そして先入観を排し、「この子の良さはどこだ」という目で相手のことを観察していくと、必ずどこかに光る何かを見つけだすことができた……

作中の教員としての葛藤や生徒・授業への向き合い方には、塾講師である自分自身と重なる部分が非常に多く、深く共感しながら読み進めました。また、8月に父を亡くしたばかりの私にとって、頑固だった父の姿が哲治と重なり、父も無器用にしか生きられなかったのかもしれないと少しやさしい気持ちになれました。自分の仕事や家族への想いを振り返るうえで、まさに最高のタイミングで出会えた一冊です。

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